1972年、世界最強、最速を目標に掲げカワサキの技術の全てを
結集して誕生した900スーパー4。
構想から5年間、New York Steakの愛称のこの機体は様々に開発コードネームを
変えながらいよいよ量産の年、”最高、最終のもの”への思いを込めて、
”Z-1”という正式名称を与えられた。

あれから約40年、半世紀を迎えようとしている今、目覚ましい技術革新の荒波の
中にあって微塵の揺らぎも見せずモーターサイクルの頂点に君臨し続ける
孤高の存在。カワサキの未来を見据えた高い設計思想と技術力は今もなお、
全ての”カワサキZ”の基本となって生き続けている。

そしてこの歴史的名車Z-1の名を冠したヒーローが
我が家にやってきた。


春とはいえまだ夜風は冷たい4月18日、一心不乱にマックをカチカチしている
私の背中に妻は「退屈だ」とか「夫婦の会話はどうした」などと罵声浴びせ続けた。 「夜の街を徘徊してニャンコをなでてくる」と言う。そしてさらに「こうなったらニャンコをさらってくる。」とまで言い出した。かなり本気になっている。
本当に連れてこられてはたまったものではない。 私も一緒についていくことにした しかし、その苦労が無駄だったと解ったのは
私の家の角を曲がってわずか三軒目であった。

マンションの駐車場のゴミ捨て場からすさまじい猫の鳴き声いや叫び声が 聞こえて
きたのである。見ると”さっき生まれた”というほどに小さい 赤ん坊の猫がいる。
目も開いていない。親猫はどこにもいない。捨てられたのか?はぐれたのか?
とにかく今夜ここで鳴き続けたこの子猫は明日の朝には確実に凍え死ぬか
餓死するであろう。”なんと哀れな人生、いやニャン生なのだろうか”と
思ったその時、妻は無言で抱え上げ、家に向かってスタスタと戻り始めた。
ヲイヲイ、待っちくり、待っちくり。日頃からあれほど猫はイカンと言っていた
だろう...。しかし、ここで私が猫を捨てさせるということはこの猫の死を意味する。
この鳴き声がこと切れて冷たく硬くなっていく。
白々と夜が明け始めた人気のない町で...。
うぅ〜ぬぬぬ。わかった、わかった。もう、わかったよ。
飼います、飼います。育てます。

こうして我が家に猫がやってきたのである。

畜生、猫め。ありがてえと思えヨ。とヒョイとひっくり返すとそれはそれは
小さなチンチンが付いていた。ムゥ男か。男としてこの世に生を受けてきたからには男として強く逞しく そしてカッコ良くならなくてはならん。
その高き望みを叶える名はズバリ”男カワサキ Z-1”
私は真夜中の四ツ谷の街に向かって叫んだ。
”Z-1ここに復活!!”
バカみたいである。


あ〜もうったく...。

back